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よく分かる!経済のツボ『カーボンプライシングってなに?』

牧之内 芽衣

目次

明示的カーボンプライシング(CP)

地球温暖化の解決に向けて、炭素の排出を有料にする仕組みを「カーボンプライシング(CP)」といいます。CPにはいくつか種類がありますが、各国が精力的に導入・整備を進めているのは明示的CP(資料1)です。経済産業省は2026年度に排出量取引制度を、2028年度には石油元売り業者などへの賦課金を導入し、ハイブリッド型のCPとする方針を示しました。

図表1
図表1

明示的CPは炭素排出量そのものに値段を付ける仕組みで、そのうち炭素税は政府が炭素に価格を付けて課税を行う手法です。価格が固定される一方、炭素排出量がどれだけ削減されるかは導入してみないとわからないという特徴があります(資料2)。排出量取引制度は、政府によりそれぞれの企業が排出可能な炭素の量の上限が設定され、超過した分や余った分を企業間で売買する制度です。炭素排出量を狙い通り定めやすい一方で、排出枠の取引価格は不透明なため、企業にとってはコスト負担見通しが立てにくいという特徴があります(資料3)。

図表2
図表2

図表3
図表3

日本のカーボンプライシングをめぐる問題点

EUは2026年以降、CPの取組みが遅れる国からの輸入品に「国境炭素調整措置」を段階的に適用し、事実上の関税をかけるとしています。日本のCP導入が遅れれば、輸出産業の競争力に影響しかねません。

日本には「地球温暖化対策のための税」という炭素税がありますが、欧州では税率が炭素1トンあたり1万円を超える国もあるのに対し、日本の289円という税率は低すぎると指摘されています。

化石燃料には石油石炭税や揮発油税などのエネルギー税制が導入されていますが、それぞれの炭素排出量と税率が比例せず、バラバラに存在していることも状況を複雑にしている一因です。

日本のエネルギー価格は他国に比して高水準とも言われています。単純に負担を上乗せするのではなく、複雑化したエネルギー税制を、脱炭素への視点から、今一度整理するのも一案でしょう。

牧之内 芽衣


本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。