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- 内外経済ウォッチ『日本~2023年経済展望~』(2023年2月号)
後半に減速した世界経済
2022年の日本経済を一言で表現すると、実感なき景気回復だったといえよう。コロナからの正常化によりサービス業を中心に経済活動は回復したものの、半導体などの部品不足の緩和が限定的だったこと等もあり、製造業の回復は限定的となった。
一方、コロナからの正常化や円安などを通じた企業業績回復を反映して、日経平均は海外の株価指数に比べて相対的に底堅く推移した。それにもかかわらず景気回復の実感が乏しかった要因は、コロナからの回復にロシアのウクライナ侵攻が加わったことで輸入物価が高騰したことがある。また、海外がインフレ抑制で金融政策を引き締めたことに伴う円安が、家計や中小企業を中心に負担を増加させたこともあろう。
カギを握るのは総合経済対策の成果
こうした中、2023年の景気を占う上では、岸田政権が打ち出した物価高克服のための総合経済対策の効果が大きなカギを握ろう。特に、物価高騰・賃上げの取り組みの成果は経済状況を大きく左右すると思われる。中でも、継続的な賃上げの促進ということで、来年の春闘賃上げ率が大きなカギを握ろう。
また、円安を活かした地域の『稼ぐ力』の回復・強化としては、コロナ禍からの需要回復、地域活性化が期待されよう。特に、大阪万博が開催される2025年までにインバウンド消費を政府目標の5兆円に到達させるためには、2023年に+1.5兆円のインバウンド消費拡大が求められよう。
更に、『新しい資本主義』の加速の側面では、5年間で1兆円と掲げられた『人への投資』がどの程度顕在化するか、また2022年にGXやDX、レジリエンス強化向けに大きく盛り上がった設備投資や成長分野における大胆な投資の促進がどこまで進むかが大きく国内経済を左右しよう。
リスクは海外経済
一方、2023年における日本経済の最大のリスクは、インフレ圧力が長引くことで、想定よりも長く海外の金融引き締めが続くことであろう。仮にこうしたことが起きれば、金融市場の混乱を通じて実体経済に悪影響が波及することは避けられない。海外経済がリセッションに陥れば、行き過ぎたドル高円安は是正されるものの、輸出や設備投資の落ち込みを通じて日本経済に悪影響が及ぶ可能性もある。
また国内では、岸田政権の支持率が低迷しており、さらに支持率が下がるようなことになれば、政治的な不安定を通じて市場の混乱が生じる可能性もあろう。さらに岸田政権が金融所得課税の見直し等を中心に2023年以降は増税に踏み切るリスクもある。
このため、今後の政局次第では、マーケット環境の悪化を通じて日本経済に悪影響を及ぼすリスクもあろう。日本株の売買は6割以上が外国人投資家であり、政権基盤が盤石なほど、外国人投資家が日本株を保有しやすくなり、基盤が揺らぐほど手放されやすくなる。そうなれば日本経済も困難を強いられることになるだろう。
なお、2023年春に執行部人事が一新する日銀の政策運営もリスクだろう。特に、日本経済の回復が不十分な状況で金融政策の見直しが進めば、日本経済が大幅に減速する可能性もある。また、海外中銀のオーバーキルもリスクである。特に、欧米諸国は金融引き締め局面にある。各国中銀が金融引き締めをやり過ぎるようなことになれば、短期的に金融市場で大きな変動が生じることになり、日本経済への悪影響も無視できないことになろう。
永濱 利廣
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。
- 永濱 利廣
ながはま としひろ
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経済調査部 首席エコノミスト
担当: 内外経済市場長期予測、経済統計、マクロ経済分析
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