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よく分かる!経済のツボ『金融ジェロントロジーの進展で老後のWell-beingを守れるか』

髙宮 咲妃

目次

金融ジェロントロジーって何?

金融ジェロントロジーとは、「金融老年学」とも呼ばれ、世界各国で高齢化が進むなか、認知機能が徐々に低下していく老年期の資産管理・運用といった経済的問題を解決すべく、1980年代後半に米国で誕生した学問です。日本では金融庁が2018年7月に「高齢社会における金融サービスの在り方(中間的な取りまとめ)」にて金融ジェロントロジーの考え方を取り上げたことで注目が集まり、研究が進んでいます。

金融ジェロントロジーはなぜ必要?

日本では、現在60歳の人の約4分の1が95歳まで生きる等、長寿化が進んでいます(資料1)。高齢者の認知症有病率をみると高齢なほど上昇しており、認知機能は加齢とともに低下していきます(資料2)。また、70歳以上が持つ世帯あたりの金融資産は過去30年間変わらず約2000万円で推移しています(資料3)。一方、金融庁資料によると、米国では75歳以上の世帯あたりの平均金融資産は1998年から2016年の約20年間で1952万円から5870万円(注:米国の金融資産額は各年の円ドル相場の平均を用いて円換算)と、約3倍に増加しています。退職世代等が持つ世帯当たりの金融資産は米国の3分の1程度となっており、生命寿命の長さも相まって資産寿命延伸の必要性は日本の方が高い状況です。認知機能が落ちる前から長寿を見据えて資産形成を行う必要があるほか、高齢者が安心して資産の有効活用・取り崩しを行うための環境整備が必要になります。

図表1
図表1

図表2
図表2

図表3
図表3

老後のWell-beingを守るためのサービスの必要性

高齢人口の増加に加え、ライフスタイルや保有資産等の多様化により、高齢者のニーズは様々であるため、個々に合わせた商品・サービスが求められています。各金融機関は、高齢者の消費、資産管理・運用などの経済活動を支援するため、2019年4月に設立された「日本金融ジェロントロジー協会」に参画しているほか、非金融機関とも連携し、暗証番号等を忘れても本人確認が可能な声紋認証の実装や終活ワンストップサービスなど、総合的なサービスを提供しはじめており、高齢者のWell-being維持・向上に寄与することが期待されます。

髙宮 咲妃


本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。

髙宮 咲妃

たかみや さき

総合調査部 副主任研究員
専⾨分野: QOL・ハピネス戦略

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