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DXの視点『自動文字起こしAIの活用による業務効率化』

柏村 祐

多くの職場では、会議や打ち合わせに伴う「議事録作成業務」が存在するが、その手間に悩んでいる人は多いのではないだろうか。

「議事録作成業務」は以前からあるものの、その業務プロセスを抜本的に効率化する方法は以前は存在していなかったが、現在は「議事録作成業務」を代替するテクノロジーとして「自動文字起こしAI」が登場している。以前から「音声認識自動文字起こしソフト」は存在していたが、その認識精度は低く実用的ではなかった。「自動文字起こしAI」は、高度に発展したAIを利用し音声を認識するため「精度が高い」議事録を作成する仕組みである。リアルタイムでの文字起こしはもちろん、パソコンやスマートフォンなどのあらゆる機器に対応しており、会社内、外出先、在宅など場所を選ばずに利用することが可能だ。

従来の人による「手動文字起こし作成」では、「文字化」の品質は作成する担当者の力量や経験に左右された。「自動文字起こしAI」を使うことは、担当者の議事録作成能力に依存せず、記録の品質を確保する効果が見込める。「自動文字起こしAI」を活用すれば、長年当たり前とされた「議事録作成業務」の業務プロセスを効率化し、品質の平準化を図ることができる。

このように、「自動文字起こしAI」を活用することにより議事録作成業務の効率化を図ることができるが、他にどのような波及効果があるだろうか。それを筆者は、「会議への積極的な参加促進」、「膨大な記録の検索性」だと考える。

「会議への積極的な参加促進」とは、会議への関与度を可視化することにより、参加者に積極的に参加するよう促すことを意味する。「自動文字起こしAI」は、誰がどれくらい発言したのかを発言文字数で比較できる。例えば、3人参加した会議の場合、スピーカー2の人が「75%」、スピーカー1の人が「23%」、スピーカー3の人が「1%未満」といった形で結果が示されるので、誰が会議に積極的か、消極的かが定量的に可視化される。

次に、「膨大な記録の検索性」とは、膨大な会議や打ち合わせの記録から、必要な情報を迅速に検索することができることを意味する。「膨大な記録の検索性」により、いつの会議や打ち合わせの中で取り上げられた内容なのか、改めて探索する時間が省けるのだ。日々開催される会議や打ち合わせの議事内容は、その回数が増えれば増えるほど、振り返って内容を確認するためには時間を要する。「自動文字起こしAI」は、会議や打ち合わせの記録を一元化するため、キーワードを入力すれば、過去の膨大な記録の中から必要な情報に速やかにたどり着くことができる。

最近では、リモートワークの普及に伴い、オンライン会議システムは日進月歩で進化している。「自動文字起こしAI」は、コロナ禍で常態化したオンライン会議システムとも連携する機能が付加されている。オンライン会議時に、常時「自動文字起こしAI」を稼働させておけば、打ち合わせや会議で共有される情報や決定事項を文字情報として保存することが可能となり、それらをキーワードで検索すれば、瞬時に会議内容を振り返ることもできる。

業務効率化による生産性向上が一層求められる中、長らく「議事録係」の負担となっていた「議事録作成業務」は、今や「自動文字起こしAI」というテクノロジーが担う世界が到来しているのだ。

柏村 祐


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柏村 祐

かしわむら たすく

ライフデザイン研究部 主席研究員 テクノロジーリサーチャー
専⾨分野: AI、テクノロジー、DX、イノベーション

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