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SDGsの羅針盤『コロナ禍でも日本の幸福度は2回連続で上昇』

村上 隆晃

目次

Well-beingに関する国や企業の関心が高まる

近年、GDPなどお金の面だけでは表せない人々の多面的で持続的な幸福を示す「Well-being」という考え方に国や企業の関心が高まっている。

今年6月に発表された、政府の「骨太の方針」では、効果的・効率的な財政運営の指針として「各政策分野におけるKPIへのWell-being指標の導入を進める」ことが謳われている。

企業主導の取組みでは、例えば、2021年3月に日本経済新聞社や公益財団法人Well-being for Planet Earthなどが「日本版Well-being Initiative」を創設し、「Well-beingを測定する新指標開発やウェルビーイング経営の推進、政府・国際機関への提言、Well-beingをSDGsに続く世界的な政策目標に掲げること」を目指していることなどが挙げられる。

国民一人ひとりのWell-beingの実現は我が国の政策運営や企業経営という視点から重要視されるようになっている。そのためにはWell-beingを測定するための指標の開発も官民共通の大きな課題である。

コロナ禍でも日本の幸福度は上昇

Well-beingを測定するGDPのような世界共通の指標はまだ存在しないが、例えば、国際連合では「World Happiness Report」(以下「世界幸福度報告」という)として、人々が感じる主観的な幸福度を公表しており、一面的ではあるが、各国のWell-beingの状況を垣間見ることができる。

今年3月に最新の「世界幸福度報告2022」が発刊され、調査対象146か国の幸福度(直近3年平均)がランキング形式で公表されている。

今回注目したのは、これまで下がり続けていた日本の幸福度が、2017~19年を底としてコロナ禍の期間を含むにも関わらず2018~20年の調査以降、2回連続で上昇した点である(資料)。今回の結果(6.039)は、過去最高に近い水準となっている。

「世界幸福度報告」では、世界的に見てもコロナ禍が幸福度に大きなマイナスの影響を与えなかった点が、意外感をもって指摘されている。その理由としては「危機に直面した時には、他者への信頼や頼りにできる人がいるという感覚が幸福度にとって大きな支えになる」ことが挙げられている。

世界幸福度報告はWell-beingを測定する指標の一つの例であるが、日本でも社会で共有される指標を開発し、官民連携してエビデンスに基づきながら、国民一人ひとりのWell-beingの実現を図っていくことが望まれる。

(本稿は、2021年8月「Well-beingとライフデザインの幸せな関係~コロナ禍での幸福度上昇を持続させるためのヒントを探る~」を基に作成、内容を一部アップデートしたもの。 https://www.dlri.co.jp/report/ld/158131.html)

図表1
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村上 隆晃


本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。

村上 隆晃

むらかみ たかあき

総合調査部 研究理事
専⾨分野: CX・マーケティング、well-being

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