よく分かる!経済のツボ『再生可能エネルギー普及の現状と課題』

世良 多加紘

目次

注目される「再生可能エネルギー

2020年10月、2050 年までにカーボン・ニュートラル実現を目指すことが菅総理から宣言され、再生可能エネルギーがその方策として注目されています。再生可能エネルギーとは、永続的に利用することができる非化石エネルギーを指し、太陽光、風力、水力、バイオマス等が含まれます(資料1)。

資料1
資料1

日本の再生可能エネルギーが発電量全体に占める比率を見ると、2013年以降一貫して上昇していることがわかります(資料2)。2021年5月には、2030年度の電源に占める再生可能エネルギーの割合を現行目標の22~24%から30%台後半まで引き上げる方針が国から示されました。これは、2019年度の実績値18%の約2倍と高い目標であり、今後も再生可能エネルギーの普及が推進されていく見通しです。

資料2
資料2

「コスト」「密度」「安定性」が普及の課題

普及が期待される再生可能エネルギーですが、発電コストの高さが課題となっています。kwhあたりの発電コストは、原子力は10円、石炭は12円、LNGは14円であるのに対し、住宅用太陽光では29円、風力では22円とかなり割高です(資料3)。

資料3
資料3

また、面積当たりのエネルギー密度の低さも課題です。100万kW級の原発1基と同じ発電量を得るのに、太陽光発電では山手線内とほぼ同じ面積、風力発電ではその3倍以上の面積が必要です。国土が狭い日本では、設備導入のハードルが高いといえます。

さらに、電力供給の安定性の問題もあります。太陽光や風力等では、季節や時間帯によって発電量にばらつきが出て、電力供給が不安定になります。

今後、再生可能エネルギーの普及による環境適合と、経済効率性や安定供給という、2つの政策目標の同時達成が求められます。再生可能エネルギーの普及を後押ししつつ、多様なエネルギー資源を安定的に確保し、バランスのとれた電源構成(エネルギーミックス)を実現することが重要といえます。

世良 多加紘


本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。

世良 多加紘

せら たかひろ

総合調査部 マクロ環境調査G 副主任研究員(~22年6月)
専⾨分野: 環境・エネルギー、人口問題

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