よく分かる!経済のツボ『アメリカの金利はなぜ注目されるの?』

奥脇 健史

世界経済の牽引役であるアメリカ

10月にアメリカの中央銀行(FRB)は政策金利を1.50~1.75%に引き下げることを決定しました。政策金利の誘導目標を引き下げることを「利下げ」(金融緩和)、引き上げることを「利上げ」(金融引き締め)といいます。金融政策は市場関係者の関心を集めますが、特にアメリカは世界経済への影響の大きさから注目度が高いです。アメリカは世界1位のGDPを誇る世界経済の牽引役であり、通貨のドルは世界の基軸通貨(国際間取引の中心となる通貨)です。ドルは世界の外国為替取引の40%以上を占めているなど、国際取引の中心的な役割を果たしています。また、日本においても輸出の約50%、輸入の約70%はドル建てで行われています。

アメリカの政策金利(上限)の推移
アメリカの政策金利(上限)の推移

外国為替取引の通貨別比率(2019 年4月)
外国為替取引の通貨別比率(2019 年4月)

政策金利が注目を集める理由

中央銀行は景気悪化時に利下げ、景気過熱時に利上げを行うことで、景気をコントロールします(資料3)。過剰な金融緩和は過度なインフレやバブル、過剰な金融引き締めは必要以上に景気を冷え込ませることになるので、金融政策の判断は慎重に行われます。加えて、政策金利は株価や為替にも影響します。例えば、利下げは貸出金利など市中金利を低下させます。これは景気の押し上げ要因となり、株価にはプラス材料です。また、一般的に資金は金利の低い国から高い国に移動する傾向があることから、利下げにより相対的に金利が低下することで、通貨安の要因となります。利上げの場合は逆です。そして、世界経済の牽引役であるアメリカの政策金利の変動は、アメリカの景気、市場への影響だけでなく、世界経済に波及するので、特に注目を集めます。

アメリカの政策金利は年に8回行われるFRBの連邦公開市場委員会(FOMC)で決定されます。次回は12月10-11日の予定です。難しい舵取りを迫られるなか、FRBの判断に注目が集まります。

一般的な金融政策の効果
一般的な金融政策の効果

奥脇 健史


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