台湾からの朗報 半導体市況の回復に自信

藤代 宏一

要旨
  • 日経平均は先行き12ヶ月41,000程度で推移するだろう。

  • USD/JPYは先行き12ヶ月138程度で推移するだろう。

  • 日銀は、10月に追加利上げを実施するだろう。

  • FEDは6月に利下げを開始、FF金利は年末に4.75%(幅上限)への低下を見込む。

目次

金融市場

  • 前日の米国株は下落。S&P500は▲0.7%、NASDAQは▲1.0%で引け。VIXは14.6へと上昇。

  • 米金利はツイスト・スティープ化。予想インフレ率(10年BEI)は2.365%(+1.8bp)へと上昇。 実質金利は1.983%(+2.1bp)へと上昇。長短金利差(2年10年)は▲34.2bpへとマイナス幅縮小。

  • 為替(G10通貨)はUSDが軟調。USD/JPYは151半ばで一進一退。コモディティはWTI原油が85.2㌦(+1.4㌦)へと上昇。銅は8991.0㌦(+124.0㌦)へと上昇。金は2261.0㌦(+24.5㌦)へと上昇。

経済指標

  • 2月米JOLTS求人統計によると求人件数は875.6万件と市場予想に概ね一致。下方修正された前月の値を小幅に上回ったものの、均してみれば減少基調にある。FEDが重視しているとみられる失業者に対する求人件数の割合も1.36へと低下。労働需給の逼迫が和らぎつつあることを示した。平均時給の先行指標として有用な自発的離職率は僅かに上昇したものの、こちらも均してみれば低下基調にあり、水準は既にコロナ期前と同程度に落ち着いている。待遇改善を求めて転職活動をする動きが鈍化していることは、賃金上昇圧力の低下とみることができる。FEDの6月利下げを支持する結果と捉えて問題ないだろう。

注目点

  • 昨日の当レポートでも取り扱ったように米ISM製造業景況指数は約1年半ぶりに節目の50を回復した。コロナ期の特需(需要がサービスから財に急激にシフト)が剥落する中で生産活動の減速が続いていたものの、ここへ来て再加速の兆しが強まったことは朗報と言える。高水準で推移する自動車生産に加え、半導体を中心とするIT関連財に明るい材料が増えつつある。

  • その点、IT関連財の生産集積地である台湾においても前向きな材料が増えつつあることは重要。世界的に生産活動が強まっていくとの期待を高める。まず製造業PMIに目を向けると、3月は49.3へと改善し節目の50を視界に入れた。内訳では新規受注(46.4→48.8)と新規輸出受注(47.5→49.7)の改善が目を引いた。そこでハードデータである2月の輸出受注を確認すると、前年比▲10.4%と春節による攪乱もあり減少に転じたが、昨年後半から続く持ち直し傾向は崩れていないと思われ、向こう数ヶ月の間に明確なプラス圏に浮上する可能性が高いと判断される。2月は輸出の約6割を占める電子製品が▲4.3%、情報通信技術製品が▲11.3%と共にマイナスであった。

  • これらの先行きが明るいことを裏付けるデータとして電子部品の出荷・在庫バランス(出荷と在庫の前年比差分)が注目される。この数値は2021年前半頃から半導体市況の軟化を先取りする形で低下し、その後2022年前半にかけて大幅なマイナス領域に沈んだが、その後は需給悪化の一服から、振れを伴いつつも改善傾向を辿り、直近は4ヶ月連続でプラス圏にある。最新値である2024年1月の数値(+28.6%)は春節絡みの一過性要因によって強さが誇張された可能性が大きいものの、それでも過剰在庫の整理にめどがついたことを窺わせる。今後は製品需給が引き締まる下で半導体を中心に電子部品の増産が期待される。もちろんこうした前向きな動きは半導体関連銘柄を数多く内包する日本株にとって追い風となる。足もとの原油高がFEDの利下げ観測の後退を通じて、世界的な株安を招く展開には要注意だが、製造業の循環的回復は株価上昇を促すとみられる。

藤代 宏一


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